現在の若者たちが「諦念」を抱いているものがあるとするならば、それは「社会」ではなくて「人生」そのものに対してである。
「親ガチャ」――という、見るからに不穏なワードが流行している。
「親ガチャ」とはようするに、自分の両親や生まれた家庭環境は選べない、いうなれば完全な運任せであることを、ソーシャルゲームの「ガチャ(=クジ引き)」になぞらえたネットスラングである。
このワードの賛否や是非をめぐり、ネットは連日にわたって大荒れの様相を呈している。「『親ガチャ』という言葉を肯定的に使う人は、自分の現状を他人のせいにしようとしている」という批判的意見があったり、一方で「『親ガチャ』という言葉を否定する人は、自分が恵まれていることに無自覚な人間だ」といった反論も聞こえる。こうした論争に各界の著名人から学者といった知識人たちも参戦して、波紋はますます広がっている。
「親ガチャ」というワード流行の背景分析として、前出の社会学者・土井隆義氏は、若者たちが自分たちの置かれた貧困状態に対してある種の「諦念」をもったから――と考察する。
たしかに一理ある分析であるが、しかし2020年代に20歳代を生きる若者たちからすれば、いまひとつ納得感に欠ける説に思えるかもしれない。というのも、いまの若者は、自分が客観的・相対的に見て「貧しい」かどうかを想像すること自体が、もはやできないからだ。ようするに、かれらはそもそも生まれてからずっと、このような社会経済状況を当然のものとして生きてきている。
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Source: ハムスター